世界的に見て安楽死や自殺幇助が法的に認められている地域であっても、「希望すれば誰でも容易に実行できる」という制度は存在しません。各国の制度設計は、本人の自発的意思と苦痛の不可避性を極めて慎重に見極める構造になっています。
スイスでは刑法115条において「利己的な動機がない限り、自殺幇助は処罰されない」と規定されています。これに基づき「エグジット(EXIT)」や「ディグニタス(DIGNITAS)」、「ペガソス(Pegasos)」といった非営利団体が活動しています。非居住者(外国人)を受け入れている団体では、完治不能な身体疾患、耐え難い肉体的苦痛、判断能力(キャパシティ)の存在が厳格に審査されます。精神科医や独立した医師による複数回の面談、カルテの英訳・公証手続きが必要であり、申請から実施まで数カ月から半年以上の期間を要します。
一方、2002年に世界で初めて包括的な安楽死法を施行したオランダでは、積極的安楽死と医師による自殺幇助の双方が規定されています。オランダ審査委員会の年次報告データによると、全死亡者の約5%が法に基づく安楽死を選択していますが、実施にあたっては「患者の要求が自発的かつ十分考慮されたものであること」「耐え難く改善の見込みがない苦痛があること」「少なくとも1人の独立した外部医師のセカンドオピニオンを得ること」など、6つの法定注意要件の遵守が厳しく義務付けられています。