かつて「茶番」と蔑まれたこのポジションは、1990年代以降のUFCやPRIDEの台頭によって劇的な再評価を受けることになります。
総合格闘技の技術体系において、このスタンド対グラウンドの構図は「猪木アリポジション」という正式な学術的・技術的呼称として認知されています。ガードポジション(下からの防御・反撃姿勢)を取る寝技系ファイターと、グラウンドを避けて立ち技で仕留めたいストライカーが遭遇した際、必然的に発生する基本構造だからです。
現代MMAのリングでは、この膠着を打開・対策するために以下のようなハイレベルな技術革新とルール整備が進められました。
- スタンド側の最新対策:
- パッシングとレッグキック:相手の両足を払い除けながら素早くサイドポジションを奪う、あるいは外側から相手の太ももやふくらはぎへローキックを叩き込む技術。
- ダイビングパウンド:飛び込むようにして上から強烈な右ストレートやフックを落とす攻撃。相手の下からの迎撃(アップキック)を警戒しつつ一撃必殺を狙う。
- グラウンド側の迎撃技術:
- オープンガードからのスイープ:相手が不用意に踏み込んできた瞬間、足の裏を相手の腰や膝に当ててバランスを崩し、上下を入れ替えるブラジリアン柔術のテクニック。
- 足関節技(アンクルホールド・ヒールホールド):相手が立ったまま近づいた隙を見逃さず、瞬時に足首や膝関節を絡め取って極める技。
さらに現代のMMA公式ルール(ユニファイドルール等)では、双方がアクションを起こさず一定時間の膠着が続いた場合、レフェリーが試合を一時止め、寝ている選手を立たせて「スタンド状態からの再開」を命じるブレイク規定が厳格に運用されています。猪木とアリがリング上で直面した「終わらない膠着のジレンマ」を、現代格闘技は技術とルールの両面から解決していったのです。