51歳という人生の大きな転換期に、彼女は突如として髪を剃り落とした。世間を驚かせた出家の背後には、長年続いた三角関係の泥沼と、作家として消費され尽くすことへの深い絶望があった。東伏見慈洽門下として天台宗で得度した際、周囲は単なる「話題づくり」と邪推したという。
しかし、直前に発表された名作『夏の終わり』は、男女の愛執と孤独を冷徹な視線で切り取った傑作として高い評価を受け、文壇での地位を確固たるものにしていた。愛の限界を知り尽くしたからこそ、彼女は俗世の愛執を断ち切り、仏の教えの中に新たな救いを見出さざるを得なかったのだ。この葛藤と決断のドラマは、まさに今改めて知るべき彼女の深層である。