海洋恐怖症を抱える人の多くが共通して強い恐怖を示すのが、深海魚や巨大生物の存在です。ダイオウイカ、リュウグウノツカイ、チョウチンアンコウといった特異な形状を持つ生物や、シロナガスクジラなどの超大型海洋生物の姿は、なぜこれほどまでに人を戦慄させるのでしょうか。
人間には、視界が不鮮明な状況に置かれた際、欠落した情報を補うために想像力をフル稼働させる脳の性質があります。底が見えない濁った水中や深海の闇を見つめたとき、脳は無意識のうちに「巨大な怪物が潜んでいるのではないか」「今すぐ下から襲撃されるのではないか」という最悪のシチュエーションを描き出してしまいます。
さらに、深海生物が持つ発光器官や巨大な牙、異形とも言える骨格は、日常で目にする陸上生物のルールから大きく逸脱しています。この「認知の枠組みから外れた未知の存在」と「逃げ場のない水中」という2つの要素が組み合わさることで、本能的な恐怖が増幅されるのです。