焼き鳥専門店で不動の人気を誇るぼんじりは、鶏の「尾の付け根(尾骨周囲)」に位置する三角形の肉です。鶏が尾羽を動かすための筋肉とそれを包む上質な脂肪が集中しており、まさに人間でいう尾てい骨の周辺にあたります。鶏肉のなかでも群を抜いて脂が乗っていることから、職人の間では「鶏のトロ」「テール」とも称される特別な部位です。
特筆すべきはその希少価値の高さです。一般的なブロイラー(生体重約2.5〜3.0kg)から採取できるぼんじりは、1羽あたりわずか10g〜20g程度(左右2つを合わせて1串分前後)しかありません。日頃何気なく口にしている焼き鳥1本には、鶏1〜2羽分の尾の旨味が凝縮されている計算になります。
「ぼんじり」というユニークな名前の由来には諸説存在します。最も有力とされているのは、お尻の丸みを帯びた形状が和菓子の「ぼたもち」や、丸い飾り玉である「凡字(ぼんじ)」「ぼんぼん」に似ていたことから転訛したという説です。また、江戸時代の男性の髪型で、襟足を短く刈り上げた形が鶏のお尻に似ていたことから「ぼんじり」と呼ばれるようになったという民俗学的記録も残されています。
日本全国の食文化を見渡すと、地域や精肉業界ごとに多彩な呼び名が存在します。これらは呼称が異なるだけで、基本的には同一の部位を指しています。