アニメ第10話「黄色ブドウ球菌」において、視聴者に最大の衝撃を与えたのが「単球」の正体でした。全身を分厚い防護服で覆い、ガスマスクを装着して機械音声のような呻き声しか発しなかった怪力集団が、血管の壁をすり抜けた瞬間、チャックを開けて中から現れたのは――満面の笑みを浮かべたフリルドレスのマクロファージたちでした。
この演出に対し、放送当時のSNSや掲示板では驚嘆の声が殺到しました。 「あのいかつい集団が全員お姉様だったのかよ!」 「脱いだ瞬間にお茶会が始まって脳の処理が追いつかない」 「設定の伏線回収が美しすぎる」 と、Twitter(現X)のトレンドを席巻したことは記憶に新しいところです。
このギミックも、純然たる医学的事実に基づいています。マクロファージの前駆細胞である「単球」は、骨髄で作られたあと血流に乗って全身を循環します。この段階では血管の内側を傷つけないよう活動を抑えていますが、組織内で異変や感染症が発生すると、血管内皮細胞の隙間を押し広げて組織液中へと這い出します(遊走)。そして組織に入った刺激によって一気に成熟し、巨大なマクロファージへと形態変化を遂げるのです。
危険地帯へ突入するまでは完全密閉の防護服で素性を隠し、現場に着工した途端に優雅な戦闘ドレスへと「お着替え」する構成は、難解な細胞遊走のメカニズムをエンターテインメントへと昇華させた珠玉のプロットといえます。