映画『思えば遠くへ来たもんだ』は、元々「海援隊」の楽曲として日本中で親しまれていたヒット曲の世界観をベースに映画化された作品だ。メガホンをとったのは、山田洋次監督の右腕として数々の傑作を支えてきた名匠・朝間義隆。松竹映画が得意とする、笑いと涙が交錯する人情味豊かな語り口が見事に結実している。
物語の主人公は、地方の高校に赴任してきた青年教師。武田鉄矢が演じる泥臭くも愛嬌のある主人公が、生徒たちや地域の人々とぶつかり合いながらも、真摯に向き合っていく姿が描かれる。
単なるノスタルジーにとどまらない。挫折や葛藤、そして人との繋がりの温かさを描いたこの青春ドラマは、現代社会が失いかけている「人の温もり」を泥臭く表現した。昭和歌謡の繊細な詞世界と映画の映像美が見事に融合したことで、本作は単なるアイドル映画や歌謡映画の枠組みを超えた、一流のヒューマンドラマとして評価を決定づけたのだ。