1946年、東京都に生まれた彼の父は、映画『男はつらいよ』の三代目おいちゃん役などで知られる大物俳優の下條正巳だ。芸能一家という恵まれた環境に生まれながらも、彼は甘えを捨て、自らの脚で演技の道へと踏み出した。その原点となったのが、名門として名高い「劇団青俳」への入団である。
若き日の下條アトムは、泥臭い下積み生活の中で徹底的に演技の基礎を叩き込まれた。舞台で培われた鋭い人間観察力と、腹の底から絞り出す言葉の説得力は、後に彼がテレビや映画の世界へ羽ばたくための揺るぎない糧となったのである。親の威光に頼ることなく、一人の役者として泥をすする覚悟があったからこそ、彼の演じる人物には独特の深みが宿ったのだ。