画面に現れるだけで空気が和らぐ。だが、一転して車を猛スピードで疾走させ、追手から逃げ切る。このギャップこそが、視聴者を画面に釘付けにした最大の武器だった。オーディションで大役を射止めた富栄ドラムは、それまで本格的な演技経験がほとんどなかった新人だ。しかし、彼がスクリーンで見せた身のこなしと豊かな表情変化は、熟練の俳優陣をも唸らせた。
言葉を発しないキャラクターは、脚本上の実験でもあった。セリフ頼みの説明を削ぎ落とし、目線の動きや独特の笑顔だけで感情を表現する。このストイックな表現方法が、かえって世界観のリアリティを引き立てる結果となったのだ。