食品開発の現場も構造変革を遂げた。かつては熟練のブレンダーや開発担当者が何百回も試飲・試食を繰り返し、自らの舌だけを頼りに微調整を重ねていた。だが現在、開発の最前線にあるのはAI味覚センサー「デジタル・パレット」だ。
人間の舌に存在する受容体の反応メカニズムを完璧に模倣したこのデバイスは、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の基本五味にとどまらず、複雑な余韻や「コク」の広がりまで数値データとして可視化する。開発スピードは従来の10倍以上に跳ね上がった。消費者の年代別・地域別の嗜好データをAIに学習させることで、「仕事終わりに30代が欲する絶妙な後味」といった極めて具体的な味付けの試作品が、わずか数時間で導き出される。