まず押さえておきたいのが、桜梅桃李の読み方と意味の基本構造です。読み方は「おうばいとうり」。春を彩る代表的な4つの樹木である「桜(さくら)」「梅(うめ)」「桃(もも)」「李(すもも)」の頭文字を連ねた四字熟語です。
大意は、「桜、梅、桃、李のそれぞれが、独自の美しい花を咲かせ、実を結ぶように、他者と自分を過度に比較して優劣を争うのではなく、自分自身の個性や持ち味を十全に発揮して生きることが尊い」というものです。いずれも同じバラ科に属し、一見すると似たような五弁の花を咲かせますが、開花する時期、花の形状、漂わせる香り、結ぶ果実の味わいは全く異なります。梅はまだ寒風吹きすさぶ早春に凛として咲き、桃は春半ばに艶やかな紅を誇り、桜は春爛漫の季節に一気に咲き誇り、李は清楚な白い花をつけて初夏に瑞々しい実を結びます。
なかでも注目すべきは、日常会話で馴染みが薄い李の花言葉と特徴です。李(すもも)は中国原産の落葉小高木で、古くから桃と並んで珍重されてきました。花言葉には「誤解」「清香」「忠実」「困難に耐える」といったものがあります。梅や桜のように派手にもてはやされることは少なくても、初夏の訪れとともに爽やかな酸味と甘みを持つ実をしっかりと結ぶ姿は、「目立たない場所でも着実に実力を蓄え、独自の価値を生み出す存在」の象徴として、多くの表現者や実業家に勇気を与えてきました。
このように並べてみると明らかな通り、梅が「なぜ桜のように派手ではないのか」と嘆くことは無意味であり、桜が「梅のように寒さに耐えて早く咲けない」と悔やむこともナンセンスです。4種それぞれが自然の摂理にかなった独自のタイムラインと機能を持っており、この多様性の調和こそが「桜梅桃李」の本質です。