小坂菜緒のキャリアを語る上で避けて通れないのが、2021年6月から2022年3月にかけて発表された活動休止(休養)の期間です。当時、デビュー以来4作連続センターという未曾有のプレッシャーに加え、映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』のプロモーションや連載、写真集の撮影など、過密を極めるスケジュールが重なっていました。
公式発表では「医師の診断に基づき、一定期間の静養が必要」とアナウンスされました。この休養の決定的な理由は、若くしてエンターテインメントの最前線に立ち続けたことによる極度の心身の疲労とコンディション不良でした。10代半ばで大阪から上京し、グループの看板を一手に背負い続けた彼女の肩にかかっていた重圧は、周囲の想像を絶するものがありました。
しかし、約8カ月間の休養期間は、彼女にとって大きな転換点となりました。復帰にあたって小坂は、かつてモデルプレスのインタビューでも触れていた「日向坂46はそれこそ日向のようにあたたかい場所」という実感を改めて噛み締めたと語っています。同期やメンバー、スタッフが急かさず温かく迎え入れた環境こそが、彼女が再びマイクを握る決定打となりました。
2022年6月にリリースされた7thシングル『僕なんか』でセンターとして見事な復帰を果たした際、楽曲の切ない世界観と自身の葛藤をリンクさせた迫真の表現力は、多くのファンの胸を打ちました。休養を経たことで、彼女は「完璧でいなければならない自分」を手放し、仲間を頼りながら自然体で挑む強さを手に入れたのです。