富山県富山市は、立山連峰の豊かな湧き水と米どころとしての歴史に恵まれた地域だ。古くから街道を行き交う旅人や城下町の人々の憩いの場として、独自の和菓子文化が花開いてきた。その歴史的背景を脈々と受け継いでいるのがあやめ餅である。
あやめ餅という風雅な名の由来には諸説あるが、しなやかで力強い餅の姿が菖蒲(あやめ)の美しさに重なることから親しまれてきたと伝えられる。質実剛健な北陸の風土が育んだ伝統和菓子は、過度な装飾を排し、本物の素材感だけで勝負する力強さを持っている。
素朴でありながら奥深い味わい。それは富山の澄んだ水と豊かな土地の恵み、そして町の人々が大切に守り続けてきた生活文化そのものを映し出す鏡と言っても過言ではない。