映画ファンの間で数ヶ月前から囁かれていた噂は、本物だった。日本映画界を牽引する名匠・是枝裕和が次回作の題材に選んだのは、劇的な事件でも華やかなヒーロー物でもない。路地裏の小さな食堂を舞台にした、至極の人間模様だ。
現在、世界の映像配信産業は空前の「日本発コンテンツ」ブームに沸いている。かつてはドメスティックな市場にとどまっていた邦画や国内ドラマだが、いまや世界同時配信によって地球規模のヒットを生み出す時代に入った。その最前線で指揮を執る是枝監督が、あえて「日常の食」と「人の営み」に立ち返った意義は計り知れない。
関係者によると、企画の立ち上げは数年前に遡るという。「世界中の人々が孤独や分断を抱える現代において、最も必要とされているのは一杯の温かいスープと、それを分け合う他者の存在ではないか」。監督のそんな強い思いが、このプロジェクトの出発点となった。