甲状腺を全摘出した患者にとって、合成甲状腺ホルモン製剤である「チラージンS」の毎日の服用は命の命綱であり、同時に生涯にわたる日課となる。毎朝欠かさず薬を飲み続けなければならないという事実自体が、心理的負担となるケースは多い。
さらに切実な問題は、適正な処方量の微調整がいかに難解かという点だ。チラージンSの吸収率は、胃の消化状態や同時に摂取する食事、カルシウム剤や鉄剤といった他のサプリメントとの相互作用によって大きく変動する。血中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が安定するまでは、動悸や指の震えといった甲状腺機能亢進症状と、強い眠気やむくみといった低下症状の間を揺れ動くことになり、これが患者のストレスを増幅させる原因となっている。