日本女子バレーの歴史において、対照的なアプローチでチームを率いたのが真鍋政義氏と中田久美氏の2人です。
真鍋監督の真骨頂は、徹底したデータドリブンなマネジメントにありました。2012年ロンドン五輪で木村沙織や竹下佳江らを擁して銅メダルを獲得した際、ベンチでiPadを片手に指示を出す姿は世界中に衝撃を与えました。第2期体制でも、エース古賀紗理那のキャプテンシーを最大限に引き出し、石川真佑や林琴奈ら小柄ながら技術力の高いサイドアタッカーの攻撃効率をデータで可視化。選手個々の役割を細分化して組織として戦う手法は、海外メディアからも極めて高い評価を獲得しました。
一方で、女性初の専任代表監督として大きな期待を背負った中田久美体制は、メディアの過剰な注目と現場の葛藤に苛まれました。当時の特番インタビューや自著で語られた「自分が結果を出さなければ、後に続く女性指導者の道を閉ざしてしまう」という切実な告白は、彼女が背負っていた計り知れないプレッシャーを物語っています。
中田氏はスピードとディフェンスを極限まで高める戦術を志向したものの、主力選手の度重なる負傷離脱や、1年間の東京五輪延期によるコンディション調整の破綻が重なりました。結果として東京五輪では予選敗退を喫し、ネット上では厳しい批判にさらされることとなりましたが、黒後愛や石川真佑といった若手を代表の主力へ抜擢し、次世代の基礎を作った功績は正当に評価されるべきです。