話は十数年前に遡る。ユーモアと科学を融合させた活動で知られる英国の科学コミュニケーター、サイモン・ワット氏が設立した「醜い動物保全協会」の公式マスコット投票で、この魚は堂々の首位を獲得した。可愛らしいパンダや凛々しいトラばかりが保護の対象として脚光を浴びる風潮に一石を投じるための企画だったが、メディアの反応は痛烈だった。世界中のWebサイトやTVショーが「世界一ブサイクな生き物」としてセンセーショナルに報じたのだ。
そのインパクトはポップカルチャーの世界にも即座に波及した。SFコメディ映画『メン・イン・ブラック3』の劇中、中華料理店の厨房のカウンターにエイリアン食材として無造作に置かれていた不気味な魚を覚えているだろうか。あの強烈なビジュアルこそ、まさに地上に揚げられて形を失った姿そのものだった。アイコンとして一人歩きした「ブサイクな顔」は、瞬く間に世界中の人々の記憶に焼き付いた。