エミリーを語る上で欠かせないのが、モデル業にとどまらない強烈な知性と自己批評精神です。デヴィッド・フィンチャー監督の名作サスペンス映画『ゴーン・ガール』において、ベン・アフレック演じる主人公の不倫相手アンディ役に抜擢された際、彼女は「絵に描いたような都合の良い愛人」としての役回りを完璧に演じ切りました。しかし、その裏で彼女は、男性目線で作られるエンタメ業界における「女性の身体の消費構造」に深い違和感を抱き続けていました。
その葛藤を克明に綴り、世界中で絶賛されたのが自著エッセイ本『My Body(マイ・ボディ)』です。本書の中で彼女は、世界的な名声をもたらした過激なMVの撮影現場で受けた理不尽な身体接触や、有名カメラマンによる性的搾取の生々しい記憶を勇敢に告白しました。「私の身体は一体誰のものなのか?」という根源的な問いを投げかけ、女性が自らのセクシュアリティを資本に変えることの恩恵と、その代償として奪われる自己決定権の矛盾を鮮烈に描き出したのです。
単なる暴露本に終わらず、現代フェミニズムと資本主義の交差点を鋭く突いたこのエッセイは、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト入りを果たし、「肉体派モデル」という世間のステレオタイプを根底から覆す決定打となりました。