料理人の間で語り継がれる雑炊のご飯のぬめり取りの真相には、単なる食感の向上だけでなく、味覚センサーの観点からも合理的な根拠があります。出汁の繊細な風味を濁らせないための工夫ですが、実は家庭調理において大きな誤解が生じやすいポイントでもあります。
ネット上のレシピでは「冷水でゴシゴシと力を込めて洗う」と記載されているケースが見受けられますが、これは完全な誤りです。過度な摩擦を加えると米粒に亀裂が入り、煮込んだ際に内部のデンプンが余計に溶け出してしまい、かえってスープがドロドロに濁る原因になります。プロの現場では、流水の下で指を熊手のように広げ、米粒同士を擦り合わせず「表面の余分な膜だけを滑らかに流す」繊細な手捌きが徹底されています。
また、「ぬめりを取ると旨味まで逃げるのではないか」という疑問の声も聞かれます。しかし、洗い流しているのは米の表面にある酸化しやすい遊離デンプンであり、米本来の甘味成分である内部のアミロペクチンは損なわれません。むしろ雑味を断ち切ることで、昆布や鰹節のイノシン酸・グルタミン酸の輪郭を際立たせる効果があるのです。