日本の家庭菜園とお弁当文化の歴史を塗り替えた「プチトマト」ですが、現在は正規の種子や苗を購入することはできません。2007年(平成19年)、タキイ種苗はプチトマトの種子販売を正式に終了しました。一世を風靡したトップブランドが、なぜ販売終了へと追い込まれたのでしょうか。
その最大の理由は、「劇的な品種改良競争による世代交代」にあります。初代プチトマトは画期的な野菜だったものの、現代の基準から見ると「果皮がやや硬い」「雨に弱く実が割れやすい(裂果)」「糖度が安定しにくい」といった栽培面・食味面の課題を抱えていました。
昭和後期から平成にかけて、タキイ種苗をはじめとする各社は熾烈な開発競争に突入します。タキイ種苗自身が開発した「千果(ちか)」をはじめ、サカタのタネの「アイコ」など、病気に強く、果皮が極めて薄く、フルーツ並みの甘さ(糖度8〜10度以上)を誇る傑作ミニトマトが次々と市場へ投入されました。栽培農家も消費者も、より美味しく育てやすい新品種へと急速に移行した結果、元祖プチトマトはその歴史的役目を終え、静かにカタログから姿を消したのです。
青果売り場や卸売市場の現場を確認しても、現在流通している小型トマトの包装パックには、すべて品種名(「千果」「アイコ」「甘っこ」など)とともに、品目名として「ミニトマト」と印字されています。つまり、現代の流通において「プチトマトという品種の野菜」はもはや1玉も存在していません。