扉を開けた瞬間、視界が白く霞むほどの煙。衣類への匂い移りを気にするような客はここにはいない。わずか6席ほどのカウンター席で繰り広げられるのは、店主と客、そして肉との真剣勝負だ。
こうした小規模店が熱烈に支持される最大の理由は、客と焼き台の「近さ」にある。肉の焼き加減を店主が横目で見守り、「今、返して」「そのまま塩でいって」と短い言葉を投げる。この絶妙なライブ感は、大規模店舗では絶対に再現できない。炭火七輪から立ち上る遠赤外線が、厳選された和牛の繊維一本一本に均一に熱を伝え、閉じ込められた旨味が口の中で一気に弾け飛ぶ。