仮にクーデターが成功し、反乱軍の要求通りに新内閣が組織されていた場合、日本は「皇道派」主導の極めて過激な軍部独裁体制へと突入していた。高橋是清大蔵大臣ら財政の要を失った日本経済は、軍部による強硬な統制経済へと一気に舵を切ったはずだ。
ここで最も視聴者や読者の興味を惹きつけるのが、太平洋戦争を回避できたのかという論点である。史実において日本を対米開戦へと突き進ませたのは、高度な総力戦体制と中国本土への泥沼の戦線拡大を推進した「統制派」の官僚的陸軍機構だった。これに対し、クーデターを主導した勢力は、主敵をあくまでソビエト連邦とみなす「北進論」を掲げていた。中国戦線への全面深入りを避け、対米激突を回避する選択肢が存在したという考察は、現在の歴史学界でも非常に刺激的な仮説として語られている。