学術的なアプローチからも凶の肯定的な価値が再評価されている。神道・日本民俗学の領域では、不運や災厄を一時的な「穢れ(気枯れ)」と捉え、それを祓うことでより強い「ハレ(日常のエネルギー)」を取り戻すという世界観が存在する。凶を引く行為は、自分自身の潜在的なリスクを可視化し、安全に小出しにして解消する「厄落とし」の役割を果たしている。
こうした伝統的な運命観は、現代のエンタメ作品を通じて若年層にも再認識された。例えば、世界的ヒットとなった映画『君の名は。』では、結び(ムスビ)の思想や、時空を超えた運命の循環が美しく描かれ、目に見えない大いなる流れを受け入れる日本独自の感性が再評価された。絶望的な状況から大逆転を果たすストーリーラインは、凶から吉へと運気を翻す日本の伝承思想と深くリンクしている。