痰(気道分泌液)は、本来はウイルスや細菌、ホコリなどの異物を体外へ排出するための重要な生体防御反応です。気管の内側には「線毛(せんもう)」と呼ばれる微細な毛が無数に存在し、粘液で異物を絡め取りながら、エスカレーターのように喉の方向へと押し上げています。
しかし、風邪やアレルギー、気管支炎などによって粘液が過剰分泌されたり水分が不足したりすると、痰は粘り気を増して線毛に絡みつき、自力での移動が困難になります。ここで多くの人がやってしまいがちなのが「力任せにゴホンと咳き込むこと」です。
呼吸器専門医の臨床データによると、過度な腹圧をかけた激しい咳は、気道内圧の急激な変化によって気管支を一時的に押し潰す「気道虚脱」を引き起こします。これにより、かえって痰の通り道が塞がれ、排出が妨げられる悪循環に陥るのです。喉を痛めずに排痰を促すには、気道を広げた状態を保ちつつ、空気の気流に乗せて痰を移動させる技術が求められます。