単行本第1巻の表紙といえば、壁の上に突如現れた「超大型巨人」と、それを見上げる調査兵団の装備を纏ったエレンの姿です。圧倒的なスケール差と人類の無力感、これから始まる過酷な生存競争を一枚で象徴するアイコニックなビジュアルでした。
これに対し、最終巻となる第34巻(通常版)の表紙に描かれたのは、夕暮れ(あるいは夜明け)の柔らかな光の中、幼少期のエレン、ミカサ、アルミンをはじめとする104期生たちが「あの丘の木」を目指して駆け上がっていく姿でした。巨大な脅威を見上げていた第1巻の絶望的な視点から一転、第34巻では仲間たちの後ろ姿をあたたかく見守るような俯瞰の視点へとシフトしています。
この対比は、エレンが命を懸けて追い求めた「自由」の原風景であり、すべての因果が始まったパラディ島の丘へと回帰する構造になっています。1巻で始まった巨人の悪夢を、34巻では人間としての記憶と絆の原点へと着地させる――。表紙という一枚絵のパッケージを使って物語全体の輪廻を描ききった手法に、連載終了時もネット上で「鳥肌が止まらない」「表紙だけで涙腺が崩壊する」と感嘆の声が相次ぎました。