不動産取引の現場において、過去に人の死亡事案が発生した住まいは心理的瑕疵物件と定義される。住み手に対して強い心理的抵抗や嫌悪感を与えるおそれがあるため、売買や賃貸の契約時には事実を説明する義務が発生するのが基本ルールだ。しかし以前は、どの程度の事案をいつまで告知すべきかという統一的な基準が存在せず、業界内でも対応が割れていた。
こうした状況を受け、国土交通省は不動産取引における告知義務に関するガイドラインを策定した。自然死や日常の事故による死亡は原則として告知不要とされる一方、自殺や他殺、あるいは孤立死によって特殊清掃が行われた事案については、賃貸契約の場合「発生からおよそ3年間」の告知義務を課す方向性が示された。しかし、人の恐怖心や忌避感は年数だけで割り切れるものではなく、ガイドラインの数値と居住者の感情の間には今なお深い溝が存在する。