2019年8月、日本中に激震が走ったのがジャムおじさん役の声優交代でした。放送開始から31年間にわたり同役を務め上げてきた増岡弘が、当時83歳という高齢を理由に勇退を申し出たことが公式発表されました。一部ネット上では体調急変やトラブルを邪推する声もありましたが、真相は「自らの高齢化を見据え、作品クオリティが維持できるうちに後進へ綺麗にバトンを渡したい」という増岡自身の潔いプロ意識による決断でした。
後任に山寺宏一が指名された理由は必然でした。山寺は第1話から同じスタジオで増岡の隣に立ち、その人間性と演技の呼吸を誰よりも熟知していました。過去に増岡が体調を崩した際にも代役を務めた実績があり、制作陣にとっても視聴者にとっても最も信頼の置ける存在だったのです。
特番インタビューや当時の手記において、山寺は「増岡さんの温かみ、あの包容力は誰にも真似できない。引き受けるのはとてつもないプレッシャーだった」と吐露しています。単なる物真似ではなく、増岡が30年かけて築き上げた「アンパンマンの生みの親としての慈愛」を心からリスペクトし、その精神を自らの声帯に宿す覚悟を決めた瞬間でした。