美輪明宏の真骨頂は、魂を削り出すようなシャンソン歌手としての歌声にある。その象徴的な瞬間が、77歳にして初出場を果たしたNHK『紅白歌合戦』での『ヨイトマケの唄』だった。
華美なドレスや金髪のウィッグを一切脱ぎ捨て、黒一色のシンプルな衣装とノーメイクに近い姿でステージに立った美輪。泥にまみれて働く母と子の情愛を、演劇的かつ圧倒的なリアリティで歌い上げる姿は、日本中のお茶の間を震撼させた。そこにあったのは「男か女か」という議論を完全に無力化する、人間としての巨大な愛と祈りだった。流行り廃りを超えたその歌声は、今なお多くの人々の胸を打ち続けている。