合理的な経営判断であったとはいえ、視聴者やエンタメファンの記憶から天王洲スタジオの名が消えることはありません。このスタジオを語る上で欠かせないのが、数多の名物番組が生み出されたテレビ東京天王洲スタジオの歴史です。
古くは『愛の貧乏脱出大作戦』『開運!なんでも鑑定団』の出張鑑定用リハーサル、さらには『やりすぎコージー』や『モヤモヤさまぁ〜ず2』の特番収録など、テレビ東京が誇るエッジの効いたバラエティはすべてこの場所で揉まれてきました。
なかでも象徴的だったのが、毎年初夏に世間を騒がせたテレ東音楽祭の収録会場としての暴れっぷりです。250坪の第1スタジオをフル活用するだけでなく、スタジオの外に出て運河沿いのデッキで歌唱したり、スタジオ内のセットを突き破って屋外へ飛び出したり、果ては隣接する運河へMCやタレントが豪快にダイブするといった、他局の整然とした歌番組では絶対にあり得ない破天荒な生中継演出が連発されました。
当時、現場で演出を担当したディレクターはかつての特番インタビューでこう語っています。
「天王洲は運河に面していて、建物の構造上も屋外スペースとの連携がやりやすかった。『東品川スタジオ』と呼ばれたこの現場には、他局に負けない面白いものを作ろうというスタッフのハングリー精神と遊び心が充満していました。あの泥臭くも熱いスタジオの空気感こそが、テレ東の独自性を形作っていたのは間違いありません」
制作拠点が洗練された六本木の高層ビルへと移った今も、天王洲で培われた「制約を逆手に取った破天荒な番組作り」のDNAは、現在の番組づくりの中に脈々と受け継がれています。