2004年5月、第57回カンヌ国際映画祭で起きた出来事は、日本映画史における伝説の一つです。当時まだ14歳の中学生だった柳楽優弥が、クエンティン・タランティーノ審査員長率いる審査員団から満場一致の絶賛を受け、カンヌ史上最年少かつ日本人初となる最優秀主演男優賞を受賞しました。
是枝裕和監督はオーディション時、彼の「目に強く惹かれた」と語っています。セリフをあらかじめ覚えさせず、現場で口頭で状況を伝えて自然な表情を引き出す演出手法の中で、柳楽が見せたアンニュイで力強い瞳は、世界中の映画人を魅了しました。
しかし、この栄誉は彼にとって重い十字架ともなりました。本人が後のロングインタビューで語っているように、「演技とは何か」を体系的に学ぶ前に世界の頂点へ立ってしまったことで、周囲の過度な期待と自身の演技スキルのギャップに直面します。「カンヌ男優賞」という肩書が常に付きまとうプレッシャーは、思春期の少年の精神を次第に追い詰めていきました。