メディアが性差をどのように物語として消費してきたかを振り返る作業も欠かせない。かつてルーアン・ブリゼンディーンの『The Female Brain』がベストセラーとなり映画化までされた時代、大衆は生物学的な性差に人生の免罪符を求めた。ハリウッド的なエンターテインメントは、対立する男女のロマンスを盛り上げる舞台装置として「脳の違い」を過剰に演出してきた歴史がある。
だが近年、潮目は劇的に変わった。Netflixのドキュメンタリー番組群やNHKの科学特集では、固定観念としての性差を解体し、ニューロダイバーシティ(神経多様性)やジェンダー規範の社会的影響を浮き彫りにする構成が主流となっている。視聴者の関心は「男と女はなぜ分かり合えないのか」という受動的な問いから、「互いの固有性をどう設計し直すか」という能動的な実践論へと明らかにシフトしている。