自分の物を取り返すと犯罪?自力救済禁止の原則と家賃滞納トラブル

自分の物を取り返すと犯罪?自力救済禁止の原則と家賃滞納トラブル

自分の物を取り返すと犯罪?自力救済禁止の原則と家賃滞納トラブルについての真相を徹底解説します。

この原則が最も先鋭的な摩擦を生んでいる現場が、賃貸住宅における賃貸オーナーと入居者の立ち退きトラブルです。家賃を半年以上滞納し、電話にも出ず居留守を使う悪質な入居者に対し、怒りを爆発させた大家が独断で鍵を交換したり、部屋に残された私物を粗大ゴミとして処分したりする事例は後を絶ちません。

しかし、こうした自力救済に打って出た瞬間、法的な立場は一瞬で逆転します。賃貸人の行為に対して科されるリスクは、民事・刑事の両面にわたり極めて重いのが実情です。

まず刑事罰の観点では、たとえ大家であっても入居者が占有する部屋に無断で立ち入る行為は住居侵入罪(刑法第130条、3年以下の懲役または10万円以下の罰金)を構成します。さらに、部屋にある家電や家具などの荷物を勝手に搬出・処分する行為は、他人の占有下にある財物を侵害したとして窃盗罪(刑法第235条、10年以下の懲役または50万円以下の罰金)や器物損壊罪に問われる危険性が極めて高いのです。

民事上でも、平穏に生活する権利を侵害されたとして、入居者側から不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)を起こされ、数百万円規模の慰謝料や家財弁償金の支払いを命じられる判決が頻発しています。怒りに任せて鍵を換えた結果、滞納された家賃を回収できないばかりか、巨額の賠償金を滞納者に支払うという最悪の結末を迎えるケースは、全国の裁判所で現実に起きています。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。