この異色企画の根底にあるのは、安倍夜郎が生み出した名作『深夜食堂』が持つ特異な求心力だ。かつてTBSテレビでドラマ化され、日本国内のみならずアジア圏、さらには欧米のカルチャー愛好家へと波及していったこの作品は、夜の孤独を抱える人々の胃袋と心をそっと満たしてきた。小林薫が演じる寡黙な「マスター」の佇まいは、言葉の壁を越えて海外クリエイターの琴線に触れている。
そこに共鳴したのが、ヒップホップ界のレジェンドであるドクター・ドレーその人だ。スタジオでのストイックな音作りを終えた深夜、彼が愛好する日本の食文化や映像美が、ある夜のインスピレーションとなって結実したとされる。華やかなスポットライトの裏側にある孤独を描くという点において、ギャングスタ・ラップの黎明期から人間のリアルを見つめ続けてきた彼の哲学と、深夜のめしやが紡ぐ人間味は驚くほど近しい。