ヨーロッパにおけるニシンの塩漬けの歴史は中世にまで遡ります。14世紀、オランダの漁師ウィレム・ボイケルスゾーンが考案した「船上でエラと内臓を素早く取り除き、すい臓を残して塩樽に漬ける」という画期的な処理法により、オランダはニシン貿易で莫大な富を築き、大航海時代の覇者へと駆け上がりました。
現在でも初夏に解禁されるオランダ ハーリング(Hollandse Nieuwe)は国民的初物グルメとして熱狂的に迎えられています。本場の食べ方は豪快そのもので、尾ビレをつまんで頭上高く掲げ、刻んだ生玉ねぎとピクルスを添えて下から丸ごと一口で頬張るスタイルが伝統です。パンに挟んだ「ブロージェ・ハーリング」も屋台の定番です。
一方、ロシア料理 セリョートカは、極寒の地で体を温めるウォッカと切っても切れない関係にあります。代表的な家庭料理「毛皮を着たニシン(セリョートカ・ポド・シューボイ)」は、塩抜きしたニシンの上に茹でたじゃがいも、人参、ビーツ、マヨネーズを層状に重ねた美しい前菜で、塩気と野菜の甘みが絶妙なハーモニーを奏でます。