ダンプ松本のレスラー人生を語る上で避けて通れないのが、長与千種との凄絶な宿命の対決である。中でも1985年に大阪城ホールで行われた「敗者髪切りマッチ(ルーザー・ボールド・マッチ)」は、日本のテレビ放送史にも刻まれる歴史的事件となった。負けた者がその場で髪の毛を丸坊主にされるという過酷極まりないルールのもと、両者は命を削るような血みどろの死闘を繰り広げた。
結果として長与千種が敗れ、リング上で号泣しながら髪を刈り取られる光景は、全国の子供たちに大きなショックを与えた。試合後、全日本女子プロレスの事務所やダンプ松本の実家には、殺気立ったファンから膨大な量の脅迫状やカミソリの刃が送られてきたという。しかし、それほどまでの社会現象を引き起こしたことこそが、ダンプ松本という稀代のヒールが到達した表現者としての圧倒的な頂点を示していた。