抜糸前後に多くの患者を悩ませる最大の落とし穴が、抜糸後ロキソニン効かないという深刻な訴えです。通常、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)であるロキソプロフェンは優れた鎮痛効果を発揮しますが、一定の病態下では服用しても激痛がほとんど緩和されません。その代表格が「ドライソケット(抜歯窩治癒不全)」です。
親知らずを抜いた後の骨の窪み(抜歯窩:ばっしか)には、通常であれば血液が溜まり、「血餅(けっぺい)」と呼ばれるかさぶた状のゼリー状組織が形成されます。この血餅は、露出した下顎骨や神経を外部刺激から保護し、組織再生を促す極めて重要な役割を果たします。しかし、過度なうがいや舌での接触、喫煙などによって血餅が剥がれ落ちてしまうと、神経が通る骨組織が唾液や口腔内常在菌に直接晒されることになります。
これがドライソケットであり、ドライソケット症状見分け方として重要なサインは以下の4点です。
第一に、「叩くような激痛が側頭部や耳の奥まで響く」、第二に、「抜歯窩を鏡で覗き込むと、赤褐色の血餅がなく白っぽい骨が露出して見える」、第三に、「腐敗臭のような強い異臭が口内に広がる」、そして第四に、「ロキソニン等の鎮痛薬を規定量服用しても2時間程度しか痛みが引かない」という点です。
一方、抜糸後の感染症細菌トラブルは、創部の内部に細菌が侵入して膿が溜まる病態を指します。この場合は骨の露出ではなく、歯肉の極端な発赤、熱感を伴う腫脹、指で押した際の排膿、そして37度台後半以上の微熱などが識別指標となります。さらに、抜糸直後に親知らず抜糸後出血止まらないといった症状が続く場合も、毛細血管の再破綻だけでなく局所感染による組織壊死が関与している疑いがあります。