ネット上のコミュニティやSNSでは「ハリー役に選ばれたことで順風満帆な声優ロードを歩んだ」と捉えられがちですが、実際には大きな誤解があります。シリーズ終了直後、小野は「ハリー・ポッターの呪縛」とも呼べる深刻なキャリアの危機に直面していました。
「ハリー役のイメージが強すぎて、他のアニメや洋画のオーディションで落ち続ける」という時期が数年間続いたのです。当時20代前半だった小野は、吹き替え専門の子役出身者というレッテルを剥がすため、舞台演劇での地道な修行を重ねつつ、アニメのアフレコ技術を一から学び直す日々を送りました。
その苦闘を打ち破った転機が、2012年のテレビアニメ『黒子のバスケ』の主人公・黒子テツヤ役への抜擢でした。感情を内に秘めた独特のトーンと静かな熱量を持つ黒子役を演じ切ったことで、業界内外に「声優・小野賢章」の実力を決定づけ、名実ともにトップ声優への道を切り拓いたのです。