「報道されているのは、全貌のほんの氷山の一角に過ぎない」。そう重い口を開いたのは、元麻薬取締官のA氏だ。内部事情に精通する同氏によれば、長年にわたる監視網をくぐり抜けてきた未公開の密売ルートが存在するという。かつて密売人は対面での手渡しを主流としていたが、近年は暗号化アプリと手渡しを組み合わせた極めて巧妙な手口へと進化を遂げた。
不可解とされた過去の逮捕劇の裏にも、実は当局による周到な戦略と、予期せぬ情報の錯綜が存在していた。あるタイミングでの着手は、上位の供給元を炙り出すための「泳がせ捜査」の限界点だったとA氏は明かす。表向きの事件報道の裏には、冷徹な駆け引きと絶え間ない情報戦が繰り広げられていたのだ。