一般に「祭主」と「大宮司(だいぐうじ)」は混同されがちですが、その役割と法的な位置づけには極めて明確な境界線が存在します。結論から言えば、祭主は「祭祀の主宰者(精神的支柱)」であり、大宮司は「宗教法人としての事務運営責任者(実務のトップ)」です。
祭主の本来の任務は、古代の皇室祭祀の伝統に則り、多忙な天皇陛下に代わって神宮の神前で「御祭文(ごさいもん)」を奏上し、陛下のお気持ちを天照大御神に直接お伝えすることにあります。したがって、神宮の組織管理や広報、林苑管理といった行政・運営に関与することは原則としてありません。
一方、大宮司は宗教法人「神宮」の代表役員を務める役職です。過去には旧内務省官僚や警視総監経験者、宮内庁次長などの要職を務めた人物が就任しており、数千ヘクタールに及ぶ神宮林の管理、年間数百万人に上る参拝者の安全確保、数百名の神職・職員の統括など、組織マネジメントの全責任を負っています。