臨床の看護現場で厳格に定められている手順は、家庭での安全な使用においてもそのまま適用されるべき基本原則です。自己判断による無理な注入は粘膜損傷を引き起こすため、以下のステップを遵守することが求められます。
注入前の最も重要な下準備が「薬液を人肌(約38〜40℃)に温める」ことです。冷たい薬液が急激に体内へ入ると、直腸刺激による急激な腹痛や、自律神経の乱れからくる迷走神経反射を引き起こしやすくなります。容器ごと40度前後のぬるま湯に数分浸し、手首の内側に当てて温かさを確認してから使用します。
注入時の体勢は、体の左側を下にして横たわり、両膝を軽く胸の方へ引き寄せる「左側臥位(シムス位に近い姿勢)」が鉄則です。人体の解剖学的構造上、S状結腸は左側へカーブしているため、左を下にして注入することで薬液が重力に従ってスムーズに奥へと流れ込み、腸壁を傷つけるリスクを大幅に低減できます。
容器の先端(ノズル)には滑りを良くするためにオリブ油やワセリン、あるいは容器先端からわずかに出した薬液を薄く塗布します。肛門に対して無理な角度で押し込まず、息を細く吐きながら体の中心軸に向けてゆっくりと挿入し、薬液を一定のスピードで押し出します。注入後はティッシュやガーゼを当てながらノズルを静かに抜き取ります。
ここで最大の成否を分けるのが「注入後すぐにトイレへ駆け込まないこと」です。注入直後は強い刺激によって反射的な便意が生じますが、ここで即座に排泄してしまうとグリセリンの薬液だけが排出され、便塊が奥に残ってしまいます。薬液が便全体に浸透して十分に軟化するまで、目安として3分から5分程度は深呼吸をしながら横になったまま便意を我慢することが、しっかりとした排便を得るための必須条件となります。