東京メトロの路線図を開くと、政治の中心に位置する国会議事堂前駅に目が留まります。とりわけ千代田線ホームに降り立った際、長いエスカレーターを何本も乗り継ぐ深さに驚いた経験を持つ人は少なくありません。
千代田線ホームの深さは地下約37.9メートル(ビル約12階分に相当)。1997年に都営大江戸線(六本木駅など)が開業するまでは、営団地下鉄(現・東京メトロ)の中で最深の駅でした。なぜこれほど深い場所に駅が建設されたのでしょうか。
最大の理由は、永田町一帯が武蔵野台地の東端に位置する起伏の激しい地形である点と、先行して開業していた丸ノ内線や皇居周辺のインフラ網、さらには強固な地盤を避けて安全なシールド工法を採用した技術的制約にあります。地上標高が高い台地の下をくぐり抜けるルートを選定した結果、必然的に大深度地下へと潜る構造になりました。
この異例の深さが引き金となり、長年囁かれてきたのが「有事の際に政府要人が避難する地下要塞や秘密シェルターが存在するのではないか」という都市伝説です。実際、国会議事堂の地下には中央食堂や売店、議事堂内を結ぶ連絡地下道が存在し、周辺省庁や議員会館との間にも安全確保用の専用地下通路が張り巡らされています。しかし、映画のような軍事要塞が存在するわけではなく、地下鉄の深さは純粋な土木工学上の要請と、首都中枢における防災・インフラ防護の観点から導き出された合理的な設計の結果です。
また、国会議事堂前駅は地下通路を通じて永田町駅(有楽町線・半蔵門線・南北線)と接続しており、合計5路線が交差する巨大な地下迷宮を形成しています。改札内連絡通路を使えば雨に濡れずに移動できますが、丸ノ内線から南北線への乗り換えなどは高低差と距離があり、徒歩で10分以上かかる場合もあるため事前のルート把握が欠かせません。