かつて昭和から平成初期のドッグトレーニング界において、「犬が足元や高い位置で寝るのは、飼い主を下に見ている(アルファシンドローム)」という言説が広く流布した時代がありました。この犬のリーダー意識と序列に関する旧来の理論は、現在では完全に否定されています。
最新の動物行動学では、家庭犬が飼い主を支配しようとして足元に陣取るという考え方は科学的根拠を欠いていると結論づけられています。犬が足元を選ぶのは、権力を誇示するためではなく、純粋に「匂いがして落ち着く」「飼い主の動きを感じ取れる」「物理的に心地よい」というポジティブな愛着行動(アタッチメント)に基づくものです。
「足元で寝かせるとワガママになるのでは」「上下関係が崩れるのでは」と不安になって無理に犬を追い払う行為は、かえって犬に不要なストレスを与え、せっかく築いた信頼関係を損なう原因にもなりかねません。愛犬の行動を序列の争いとして捉えるのではなく、安心を求める純粋なコミュニケーションとして受け止める視点が大切です。