介護問題にいち早く光を当てた『恍惚の人』と、化学物質による環境汚染や農薬のリスクを告発した『複合汚染』。この二大作品が残した問いは、時を経るごとにその凄みを増している。
認知症介護が個人の暮らしにとどまらず社会構造全体の課題となった現在、『恍惚の人』が捉えた家族の摩擦や人間の尊厳を巡る苦悩は、まさに私たちが直面する現実そのものだ。さらに、環境破壊や食の安全性が日常的に脅かされる現代の視点で『複合汚染』を読み直すと、その先見性には思わず息をのむ。彼女が遺したメッセージは、私たちが目を背け続けてきた危機の未来図に他ならない。