この再評価の波は出版界にとどまらない。日本放送協会が制作したドラマ『咳をしても一人』は、放哉の晩年を冷徹かつ情感豊かに描き出し、放送直後からソーシャルメディア上で大きな反響を呼んだ。現在ではNHKオンデマンドでの配信に加え、Netflixでも国内外に向けて順次配信がスタートしており、国境を越えて視聴者を獲得しつつある。
単なる伝記にとどまらず、優れた人物ドキュメンタリーの手法を取り入れたこのドラマは、放哉の人間的弱さや身勝手さを美化することなく提示した。自己愛と自責の念に引き裂かれる主人公の姿は、多くの視聴者の胸を締め付けた。不完全な人間の苦悩を丹念に追体験させる映像演出が、放哉文学への入門として機能している。