日本の競技環境を飛び出し、世界のトップコーチやアスリートが集う欧州へ拠点を移した選択は、彼の跳躍を根底から変えた。かつてのスタイルは、持ち前の高いバネと空中での柔軟性に依存する部分が少なからずあった。しかし、現在の彼は違う。助走の1歩目からトップスピードに乗るまでの加速が劇的にスムーズになった。
「助走スピードの底上げなくして、世界大会での金メダルはない」。彼が繰り返し口にしてきた言葉だ。時速36キロを超える助走から踏切板へと力をロスなく伝える技術は、単体のスプリント力向上とともに着実に磨かれてきた。助走のラスト4歩、沈み込みからの鋭い踏み切り。砂場に飛び込む直前のエネルギー伝達効率は、まさに世界基準そのものだ。