「花束を君に」のプロモーションにおいて極めて重要だったのが、切り絵アニメーション作家・辻恵子さんによるミュージックビデオ(MV)の存在です。宇多田ヒカルさん本人が出演しない形で公開されたこのMVは、楽曲の世界観を補完する芸術作品として絶賛されました。
朝ドラのオープニング映像と連動しつつ、日常のささやかな営み、花々の移ろい、そして静かに去りゆく人影が温かみのある手仕事のアニメーションで描かれます。実写の本人映像を用いなかったことで、リスナーは自分自身の個人的な別れや大切な家族の記憶を映像に投影することが可能になりました。
後に公開された宇多田さん自身が歌唱する別バージョンのMVにおいても、無駄な装飾を一切削ぎ落とし、モノトーンに近い静謐な空間で歌と対峙する姿が収められており、アーティストとしての成熟が鮮烈に刻まれています。