『家路』の歴史を紐解く上で欠かせないのが、1980年10月にリリースされた6枚目のオリジナルアルバム『Home Bound』の存在です。当時の浜田省吾は、フォークや歌謡ポップス路線からの脱却を強く志向し、自らのルーツである骨太なアメリカン・ロックの確立を模索していました。
ロサンゼルス録音を敢行した同作では、TOTOのメンバーであるスティーヴ・ルカサーやマイク・ポーカロをはじめとする腕利きミュージシャンが多数参加。乾いたハードなギターリフが鳴り響くアルバムのラストを飾る楽曲として配置されたのが、この『家路』でした。プロデューサーや制作陣との激しいディスカッションの中で、「どんなに激しいロックを鳴らしても、核にあるメロディとメッセージだけは絶対に譲らない」という強烈なアイデンティティから紡ぎ出された誕生秘話が残されています。
疾走感あふれるロックナンバー群でリスナーを圧倒した後に訪れる、あまりにも深く静謐な祈りのようなバラード。アルバム全体の緊張感を一気に浄化するこの構成は、当時の音楽メディアやファンに強烈な衝撃を与えました。