記憶に新しい「大吉原展」で巻き起こった倫理的議論は、国内のキュレーション界に深い爪痕を残した。美化か、それとも歴史的事実の直視か。この重い問いを引き継ぐ形で、東京国立博物館をはじめとする研究機関は、より多角的な視点の提示を模索してきた。
江戸の吉原遊廓が育んだ服飾、書物、音楽といった高度な都市文化は、制度的な人権侵害の現場という暗黒面と表裏一体であった。どちらか一方を切り捨てるのではなく、両極の緊張感をそのまま展示空間に落とし込む。今回の新プロジェクトには、日本国内での議論を経たからこそ到達できた、成熟した批評眼が注ぎ込まれている。