ポメラニアンには、この犬種に特有の脱毛疾患が存在する。獣医師の間で「AHD(Adult-onset Hereditary Dermatosis)」あるいは「脱毛症X(Alopecia X)」とも呼ばれる症状がそれだ。
ポメラニアンAHD脱毛症とは何か
AHD脱毛症(成犬発症型遺伝性皮膚疾患)は、ポメラニアンやスピッツ系犬種に多く見られる原因不明の非炎症性脱毛症だ。「ブラック・スキン・ディジーズ(黒色皮膚症)」と呼ばれることもある。主な特徴は以下の通り:
- 1〜3歳の若い成犬から発症することが多い
- 体幹部(胴体・背中・腰回り)から左右対称に毛が抜ける
- 脱毛部の皮膚が徐々に黒く色素沈着する
- 痒みや炎症は基本的に伴わない
- 毛が生えてこない状態が長期間(数年)続くことがある
- 原因はホルモン代謝の異常、成長ホルモンの分泌不全などが候補として挙げられているが、2026年現在も明確な解明には至っていない
AHD脱毛症は見た目には深刻だが、犬の全身的な健康には直接影響しないことが多いという点も重要な知識だ。ただし見た目の変化から飼い主が過度に心配するため、精神的なケアと正確な獣医師の診断が重要になる。
ホルモン異常による毛が抜ける病気
AHD脱毛症以外にも、ポメラニアンのホルモン異常に起因する脱毛症として以下の疾患が確認されている:
- 甲状腺機能低下症:代謝の低下により皮膚が乾燥し、全身的な脱毛が進む。体重増加・元気消失・寒がりなどを伴う。
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群):コルチゾール過剰分泌による左右対称の脱毛。腹部膨満・多飲多尿・食欲増加が典型症状。
- 性ホルモン関連脱毛:避妊去勢手術前後の性ホルモン変動により発症。手術後に改善するケースが多い。
これらの疾患は血液検査・ホルモン値測定・皮膚生検などによって診断が可能だ。異常を感じたら、「少し様子を見よう」という判断は禁物。早期発見・早期治療が毛並みの回復可能性を大きく左右する。