本作の主人公・桧山健太郎(斎藤工)は、広告代理店の第一線で活躍するスマートなエリートサラリーマン。出世欲旺盛で女性関係もスマートにこなしていた彼が、ある日突然、予期せぬ妊娠を告げられるところから物語は大きく動き出します。パートナーである瀬戸亜季(上野樹里)もまた、フリーライターとしてのキャリアを最優先に考えており、結婚願望や子育て願望とは無縁の生活を送っていました。
当初は中絶も視野に入れていた健太郎でしたが、自身の境遇を逆手に取り、広告代理店パーソンとして「男性妊夫」という自らのアイデンティティをアパレル企画などのビジネスへ昇華させる道を選びます。しかし、その過程で彼を待ち受けていたのは、激しいつわりや予期せぬ母乳漏れといった肉体的苦痛だけではありませんでした。「男のくせにみっともない」「ビジネスに利用している」という世間の冷たいバッシング、職場で被る不利益、そして無理解という、これまで女性たちが一方的に背負わされてきた理不尽な社会的障壁そのものでした。
最終回に向けて描かれるのは、健太郎の出産と、亜季との関係性の最終着地点です。破水した健太郎は緊急帝王切開の手術を受け、激痛と葛藤を乗り越えて無事に元気な男の子を出産します。ここで本作が従来のファミリードラマと決定的に一線を画したのは、「子どもが生まれたからといって、2人が安易に婚姻届を出して型通りの夫婦になる道を選ばなかった」という点です。
健太郎と亜季が下した決断は、法的な婚姻関係を結ぶことではなく、自立したプロフェッショナル同士として「対等に育児を分担する共同パートナー」になることでした。ラストシーンでは、健太郎がこれまでの会社員生活に区切りをつけ、同じ境遇の妊夫たちを支援する新たなビジネスを立ち上げて独立。亜季も海外取材の夢を諦めず、互いの生活圏と心理的境界線を尊重しながら子育てに向き合う姿が描かれました。ステレオタイプなハッピーエンドを鮮やかに解体し、個人の尊厳を守り抜く姿勢を提示したこの結末は、多くの視聴者に新鮮な驚きと納得感を与えました。